第4回 羽賀さんのゆううつ
(歯周病編)

はがせバイオフィルム
文:飯尾秀人、絵:KOUJI
オーダーメイドのハミガキ
<これまでのあらすじ>
羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して妊娠中の長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親(りょうしん)の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。ある朝、顔が腫れて、歯医者さんに行った大二郎さんは、歯周病と診断され、歯磨きの大切さを学びました。
歯科医院から帰ったその日の夕食のことでした。
「納豆食べるでしょ」
テーブルについた大二郎さんの前に、浮江さんは納豆の入った小皿をポンと置きました。
「あっ、バイオフィルム」そうつぶやいた大二郎さんに、浮江さんはいぶかしげにたずねました。
「帰って来てから何か様子がおかしいけど、バイオフィルムって何なの?」
「実は、今日、歯医者に行って教えてもらったのだけど、プラーク(歯垢)っていうのはバイオフィルムというかたまりになっていて、2~3回軽くこすったくらいではなかなか落とすことができないらしいんだ。つまり一つ一つのバイ菌が大豆だとすると、そのままだったら簡単に洗い流せるけど、プラークは納豆みたいになっているので、取るのに時間がかかるっていうわけさ」
「じゃあ、ハミガキも強くゴシゴシ磨けばいいわけ?」
「いや、そうじゃないんだ。強く磨けばだんだん歯ブラシの動きが大きくなるから、歯周ポケットとかいうバイ菌のすみかには届きにくくなるのだって。だから軽い力で回数をかけて磨くことがポイントになるわけさ」
大二郎さんは今日先生から教えてもらったことを浮江さんに、にわか専門家になって説明しだしました
「ふーん、何だか難しそうね。でもハミガキにもいろいろやり方があるのかしらね」
「そうらしいよ。歯周病の人にはこのハミガキの仕方がいいとか、その人の歯並びによって少しずつ変えていくらしいよ」
「服でいえばオーダーメードっていうわけね」浮江さんは感心したようにいいました。
「だからハミガキ指導は手間がかかるけど大事だって、先生が言っていたなあ」
「歯を磨いているのと磨けているのは違うってよく耳にするものね。新聞のコラムで読んだのだけど、歯周病は歯だけじゃなく他の病気を引き起こし命さえ脅かす怖い病気だっていうわよ。まだまだ健康で働いてもらわなくちゃいけないのだから、この際しっかり治してもらうことね」
そうやって大二郎さんを励ました浮江さんでしたが、その時、彼女は気がついていませんでした。大二郎さんとは違う歯の病気が彼女にも忍び寄ってきていたことを………。
愛媛県歯科医師会監修、毎週木曜掲載
<はぴか情報>
歯ブラシと歯磨き剤を使って、丁寧にブラッシングしても歯こうの除去には限界があります。歯ブラシの毛先の届きにくい歯と歯ぐきの境目、歯と歯との間などの部分には、フロスや歯間ブラシの使用がおすすめ。これらを用いれば、歯こうのほとんどを除去することができます。(資料提供・8020推進財団)