羽賀さん一家の

元気ではぴか

第61回 明日への願い
(お口の育成編)

バランスが大事

文:飯尾秀人、絵:KOUJI
口の中の姿勢を正しく

<これまでのあらすじ>
羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して初孫の美代(みよ)ちゃんを生んだばかりの長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。ある日、加奈さんの夫で雑誌社に勤める板井洋(いたいひろし)さんは、家族と明夫君を連れて同僚堀井(ほりい)さんの一家とブドウ狩りへ。堀井さんから、口のトレーニングの意外な効果を教わります。

実は加奈さんは明子さんから、二人でエステに通うことを勧められていました。そして、そのことは二人だけの秘密だったのです。そんな密約が交わされているとは、露とも思っていない呑気な二人の亭主は、いつもの激論を交わし出しました。

「だけど、どうしてこんなものに、そんな効果があるんだろう?」

「ならば、教えてしんぜよう」

不思議がる洋さんに、堀井さんは口腔筋機能療法(こうくうきんきのうりょうほう)(MFT)のことを教えてあげました。口腔筋機能療法とは良い歯並びを保つために行う口の筋肉の訓練法です。誰もが体の筋肉を鍛えたり、柔軟のためのストレッチは大切だと認識しているでしょう。しかし、口の周りの筋肉や舌を鍛える必要性を考えたことがあるでしょうか。しかし、それを行うことによって、さまざまな効果が期待できるのです。

「歯には、外側からはくちびるや頬からの力、内側からは舌からの力がかかっていて、この力(ちから)のバランスがつりあっていると歯は正しい位置を保てるんだ。でも、口をぽかんと開けていたり、口呼吸をしていると、くちびるから歯にかかる力が少なくなり、歯並びが悪くなったり、さまざまな悪習癖を引き起こしてしまうんだ」

「つまり、バランスが大事だということか」

「そういうことだね。くちびるの力は正常なら2キログラム位あるんだけど、口呼吸をしている人は1キログラムないこともあるらしいんだ。だから、このリップトレーナーを使ってくちびるの筋肉の力を鍛え、舌のストレッチをすることによって、口の中の悪習癖を予防することができるんだ」

「そうか、睡眠中の聡くんの舌も筋力がついて正しい位置に誘導されたから、いびきがなくなったんだね」

「それに、もう一つ重要なことがあるんだ。それは、口の中の姿勢を正しくすることだよ」

「口の中に正しい姿勢などあるのかい? そういえば、ハミガキも自己流ではだめだって教わったな」

私達はリラックスしている時、舌は上あごにぴったりと接し、舌の先は「スポット」にあたっています。「スポット」とは、上の前歯の裏側の歯茎の部分です。また、唇は軽く閉じていて、歯は奥歯が咬み合っていない状態が、正しいポジションなのです。この環境バランスが保てないと、顔面の形態・歯列・発音に大きな影響が出てくるのです。

「さあ、そろそろ帰りましょうか」

二人の会話が一段落ついた頃、加奈さんの言葉にみんながうなずき、家路に就く準備を始めました。明夫君も、おみやげに両手に抱えきれないほどのブドウを袋に入れて、持って帰りました。

その晩、板井さん一家は、羽賀さんの家で夕食をごちそうになり、昼間に話していたことが話題になりました。

「ふーん、リラックスしている時は、口の中にも正しいバランスがあるのね。私の頭痛も知らず知らずに咬みしめていたのが原因だったものね」

「無用な力が入ると、ティーショットも曲がってしまうのと同じことだな」

浮江さんの言葉に、ゴルフ好きの大二郎さんがそう返事しました。ただし、彼の場合は、ボールの行方はボールに聞かなければならないことが、しばしばだったのですが…。


<はぴか情報>
お父さん クラブ磨くより 歯を磨け(高1、新崎由佳さん)

愛媛県歯科医師会(089・933・4371)の第1回「はぴかちゃん歯いく大賞」(小学生以下、中高生、一般)ユニーク賞受賞作をご紹介します(学年・年齢は昨年)。9月末まで第2回募集中。要項は左欄の同会ホームページに。