羽賀さん一家の

元気ではぴか

第36回 保志子さんの決断
(義歯編)

もしも入れ歯になったなら

文:飯尾秀人、絵:KOUJI
入れ歯の手入れは丁寧に

<これまでのあらすじ>
羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して妊娠中の長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。歯科医院を訪れた保志子さん。これまで何となく口臭が気になっていましたが、日真名先生(ひまなせんせい)の説明で、入れ歯の手入れの悪さが原因と気づきました。

「入れ歯は普段、どうお手入れをしたらいいのですか」

そう質問した保志子さんに、日真名先生は入れ歯の清掃方法から説明してくれました。義歯は少なくとも1日1回は丁寧に洗わなければならないこと、洗面台で落として割らないように水をためて洗った方がいいこと、専用の義歯用ブラシを使った方が歯ブラシより効果的に洗えることなどです。

「義歯は夜寝ている間、外しておいてください。そして乾燥してゆがまないよう、必ず水の入ったコップや専用ケースに保管してくださいね」

「夜は外さないといけないのですか?」

「例外もありますが、一般的には外しておいてください。例えば、腕に時計や輪ゴムをつけたままでいると、その跡が残ってしまうでしょう。これは長い目で見ると、その部分がやせてしまうことにつながるのです」

先生の説明によると、歯や歯茎を休めて口の中が新鮮なだ液に触れ合う状態が、口臭や病気の予防に好ましいと考えられているようです。また、就寝中に入れ歯を入れたままでいると、早く歯茎や骨がやせてしまうそうです。ただ例外として、夜眠っている間に無意識に残っている歯を噛み合わせて、歯茎に大きな傷を作っている場合、数日間は入れ歯を入れたまま眠ってもらうこともあるようです。

「義歯を外したらよくうがいをして、歯茎の汚れも忘れずに落としてくださいね。そういえば、内蔵さんの入れ歯は部分入れ歯ですから、残っている歯や金属のバネの部分も丁寧に磨いてあげてください。以前、部分入れ歯を外さずにハミガキをしている人がいて驚いた経験があります」

「それじゃあ、服を着たままお風呂に入るようなもんですね」

隣で話を聞いていた衛生士さんも保志子さんの返事に笑っていましたが、羽賀さん一家のユーモアのセンスは彼女譲りなのかもしれません。その後、保志子さんの入れ歯は作ってから年数がたち、歯茎がやせて入れ歯とすき間ができていたので、それを埋める処置をしてもらいました。直接口の中で赤い合成樹脂を盛っていくので、においが少し気になりましたが、上下の入れ歯を治してもらってからは、見違えるようにしっかりした感じになりました。

「先生、歯茎にピタッとした感じになりました。これならまだまだ使えそうです」

そう言葉が飛び出してしまった保志子さんでしたが、事実、一度痛い所を調整してもらうだけで、以前に比べて格段に食事がしやすくなったのでした。しかし、人工の歯の部分はかなり摩耗して平べったくなり、食べ物を噛み切りにくくなっていましたので、新しい入れ歯を作ることになりました。

新しいトメさんの入れ歯に並んでいる人工の歯は、保志子さんの入れ歯の歯に比べて、作り物ではないような自然観がありました。もしも入れ歯になっても、あれだったら入れ歯だと人には気づかれにくいでしょう。そして、先生に見せてもらった入れ歯用の新しい人工の歯は、トメさんの口の中で光り輝いていた歯と同じものでした。


<はぴか情報>
義歯はデリケートな人工臓器です。噛み合わせの悪い義歯を長期間使用していると、不自然な・み方になり、あごや関節の位置が変化することがあります。義歯と顎堤(義歯の乗る部分)の間にすき間がある場合は、義歯を調整したり、新しく義歯をつくり直したり、常に自分の口に合ったものにしましょう。(資料提供・8020推進財団)