羽賀さん一家の

元気ではぴか

第34回 保志子さんの決断
(義歯編)

間違いない

文:飯尾秀人、絵:KOUJI
ピッタリ合う入れ歯で体力向上

<これまでのあらすじ>
羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して妊娠中の長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。内蔵さんの口腔ケアも順調で、一安心の保志子さん。今朝も仲間と元気よく体を動かしているようです。

保志子さんは毎朝、地元の老人会の仲間とゲートボールを楽しんでいます。

「あー、だめだ」

保志子さんの打った球は少し曲がって、ゲートの横をかすめていきました。今日の保志子さんの成績はいまひとつだったようです。

「どうしたの、最近スランプみたいだね。わたしゃ絶好調だよ。フヒヒヒヒ」

気落ちしている保志子さんに話しかけてきたのは、ゲートボール仲間の金井トメさんでした。トメさんと保志子さんはゲートボールのライバルなのですが、その時笑ったトメさんの口元が白く輝いているのを、保志子さんは見逃しませんでした。

「あんた、その入れ歯どうしたの。新しく作ったのかい? この前まで入れ歯が痛いわ、はずれるわ、文句ばっかり言ってたじゃない」

事実、トメさんの口元には新しい入れ歯が白く輝いていました。

「これは、あんたみたいな保険の入れ歯じゃあなく、自分で高いお金を払った高級入れ歯さ。これに替えてから何でも食べられるし、ゲートボールだって絶好調だよ。わたしゃ、良い物には金に糸目をつけないからね。フヒヒヒヒ」

以前、トメさんは街のはずれに猫の額ほどの畑を所有していましたが、道路からも離れていて彼女もその土地を少し持て余していました。しかし、運はいつ舞い込んでくるかわかりません。その土地の真ん前に大きな道路が出来て、それを売った彼女は使いきれないほどの大金を手にすることができたのです。 「この前までトメさんは、あんなに上手じゃなかったのに、ああ悔しい」

ゲートボールが終わってトボトボと家路についている保志子さんは、そう独り言を言いました。トメさんから高級入れ歯の値段を聞いた保志子さんには、残念ながらそんな大金を入れ歯につぎ込むことはできそうになかったのです。

「私だって高級入れ歯だったら負けるものか」

肩を落として歩いていた保志子さんの目に、大きな犬と日真名先生の姿が飛び込んできました。

「あれ先生、犬とお散歩ですか?」

「ええ、最近少し太り気味で、犬と一緒なら続けられるかなと、毎日散歩をしているのです。だけど、こいつ力が強くて引きずられてしまうんですよ。これじゃあ、どちらが飼い主かわかりません。今日は休みだったので少し遠出をしてしまいましたが、それより保志子さん、何か元気がありませんね。内蔵さんの具合でも悪いのですか?」

「いや、そうじゃないです。ところで先生、高級入れ歯を入れると保険の入れ歯と違ってゲートボールもうまくなるんですかいの。トメさんは高級入れ歯を入れる前は下手だったから、間違いないと思うんです」

「高級入れ歯? ああ、それは金属床といって、通常保険の入れ歯はその大部分が合成樹脂、つまりプラスチックで出来ているのです。ところが、金属床の場合、その骨組みが金属で出来ていますから、薄くできるし熱を伝えるので装着感もその分いいかもしれませんね」

日真名先生はそれぞれの長所、短所を詳しく説明してくれました。


<はぴか情報>
入れ歯には、なんとなくマイナスのイメージを抱きがちですが、歯を抜けたままにしておくと、かみ合わせが不自由になるなど、さまざまな影響が出てきます。慣れるまでに少し時間がかかる場合もありますが、その際はがまんせずに、歯科医師に相談してください。(資料提供 8020推進財団)