第54回 新米パパの夢
(乳歯編)
三つ子の歯丈夫、百までも
文:飯尾秀人、絵:KOUJI
遊びの中から歯みがき習慣
<これまでのあらすじ>
羽賀さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して初孫の美代(みよ)ちゃんを生んだばかりの長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男昭夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。加奈さんは美代ちゃんの歯を守ろうと、夫の板井洋(いたいひろし)さんと虫歯の勉強を続けています。いっぽう洋さんにも一つ、夢があって…。
子供の頃にムシ歯で苦しんだ経験のある板井洋さんと加奈さんは、初めての子育てに失敗しないよう、これから美代ちゃんがうまくハミガキを覚えられるか、相談しています。
「美代も乳児用ハブラシを口の中に入れるのを嫌がらなくなってきたし、もう少し大きくなって自分でハミガキができるようになったら、遊びの中にも取り入れてみようと考えているの」
2~3歳までは、まだハミガキはできないので、保護者が全面的に磨く「保護者磨き」をしてあげてください。またハミガキを嫌がらないよう習慣づけするのに、ひと工夫することも大切です。例えば歯磨きの歌やビデオに合わせてハミガキをするとか、お気に入りのキャラクターの歯ブラシを使用するのも、一つの方法でしょう。また大人が楽(しそうに磨いているのを見せるのも、効果があるようです。
「へえ、いろいろ考えているんだね。新米ママとしては合格点だね」
洋さんは感心しきりですが、加奈さんのこれらの知識は、歯についての母親教室で他のお母さんから教えてもらったことだったのです。また加奈さんは先日、ある雑誌に出ていた「子供の能力は3歳までで決まる」という記事のことがとても気になっていたのです。
「でも堀井ところのお兄ちゃんは、生えかけてきた大人の歯がムシ歯になって、かわいそうだな」
「でもまだ初期う蝕なら、メンテナンスをしっかりすれば大丈夫だって、日真名先生もおっしゃっていたわよ。それにシーラントという方法もあるしね」
「シーラント!何だい、それ?」
シーラントとは予防填塞とも呼ばれていて、ムシ歯になりやすい奥歯の溝に流動性の高いプラスチックを流し込み、シーリング(封鎖)する方法です。奥歯の溝はハブラシが届きにくく、歯垢がたまりやすいので、生えてから2、3年以内の乳臼歯や大臼歯のムシ歯予防に効果があります。
「ふーん。そんな手もあるなら、これからはムシ歯も少なくなるかもしれないね」
「日真名先生が、『学校健診に行っても、ムシ歯のある子が少なくなったなあ』とおっしゃっていたわ」
「それじゃあ、歯医者も商売あがったりかも知れないね」
子どものムシ歯はこの20年ほどでかなり少なくなっています。厚生労働省の調査によると、12歳児のムシ歯は、1981年に平均5・5本だったのが、99年には2・5本に減少しているのです。これは予防への意識が高まり、歯磨き習慣が定着したためかもしれません。しかしその一方で、一部の子供は重症のムシ歯を放置していて、二極化の傾向を示しているのも事実なのです。
「でも以前は会社第一人間だと思っていたあなたが、美代が生まれてからは別人のように家庭をかえりみるようになったわね」
「そりゃあ、僕にだって夢があるからね」
実は、洋さんは一つの夢を抱いています。それは美代ちゃんが健康に育って、大人になった頃には絶世の美女になっていることです。また目を閉じると、ある風景が浮かんできます。それは彼女が、かぐや姫のように数多の男性に言い寄られている隣で、ダメダメと首を横に振る自分の姿でした。
<はぴか情報>
あさがおを はみがきしながら かぞえたよ(小1、松本美咲さん)
月あかり 歯ぴか美人の ひいばあちゃん (高3、鈴鹿まり子さん)
愛媛県歯科医師会(089・933・4371)「はぴかちゃん歯いく大賞」(小学以下、中高生、一般)第1回入賞作(学年は昨年)をご紹介します。9月末まで第2回募集中。要項は左欄の同会ホームページにあります。