脳震盪とは、受傷後、一過性の意識消失をきたしますが、2時間以内に意識が戻り、その後、神経系の障害がみられないものをいいます。一過性とはいえ意識消失があったのですから、脳になんらかの変化があったことは間違いないところです。
スポーツ外傷の際の、外力は多くの場合、顔面下部など、頭部前面に発生します。外力が弱いと衝撃を受けた部位のみ損傷されますが、強いときには脳に影響を及ぼします。
また、脳への影響は、外力が比較的軽いと脳震盪程度で済みますが、強くなると、脳挫傷、頭蓋内出血をきたし、重篤な結果を引き起こします。
この脳に対する外力の影響は、外力が加わった場合の頭蓋骨と脳の移動にズレが生じるために起こります。頭蓋骨と脳の間には、髄液で満たされた空間があります。いわば、脳は頭蓋骨の中で水に浮いた状態であると考えてください。顔面に衝撃をうけると、頭蓋骨が直線的に移動または回転します。しかし、脳は同時には動かず、元の位置に留まろうとします。このため、衝撃を受けた側の脳は移動する頭蓋骨内面とぶつかることになります。衝撃を受けた反対側では、空間が広がることとなり、この広がりが大きくなるとこの部分の脳表静脈が伸展断裂し出血をきたします。この機序により、脳障害が起こります。
なお、スポーツ外傷の場合は、脳の直線的加速よりも回転的加速による影響が大きいといわれています。