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いろ歯にほへと

愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー

平成15年4月 第3週

歯周病㊦ 地味な手入れが基本

前回までに、歯周病の病態と治療についてお話ししました。今回は、歯周病で歯を失わないためにどうすればよいのか?という点についてお話ししたいと思います。

歯周病は、細菌性の因子と免疫系など遺伝的な因子、喫煙・ストレス・食生活などの環境因子によってリスクが高まります。ですから、それぞれ歯周病になりやすくなる要因を取り除いていかなくてはなりません。 

25歳~34歳の人の約80%が歯周病に罹患していること、そしてこの時点ではほとんど自覚症状がないことは以前にお伝えしました。中には、早期発症型で免疫系など遺伝的にリスクの高い人たちもいます。この方たちは、一刻も早く歯周病の管理が必要です。まず自分の現在の状況を知り、適切なアドバイスを受けて下さい。そして悪化させる要因の喫煙・偏食・睡眠不足は避け、ストレスを減らす工夫も必要です。そうでない方は、まだ軽い歯周病のはずです。適切な処置を受け、管理すれば、骨を失うことなく健康な歯ぐきを保ち続けることができるはずです。 35歳以上の人もおなじです。少し歯周病が進行した人も治療を受ければ安定した状態を取り戻せます。

歯周病にまだかかっていない人も、治療を受けて安定した人も、自分の口の中に付いた汚れを取り除くすべを知っておく必要があります。そのための歯みがきは欠かせません。「私は毎日しっかり磨いている」と自信をお持ちの方も要注意です。乱暴に磨きすぎて歯ぐきが縮んでしまったり根っこが露出してしまったり、さらには歯の根を磨き削ってしまった人たちもよく見かけます。歯ぐきの状態によって磨き方や使用する道具が変わってきます。特に歯と歯の間を磨くのは難しく、歯間ブラシや糸ようじなど、歯間清掃具を使うことが勧められます。思い込みは捨てて、プラークコントロールのプロフェッショナルである歯科衛生士に適切な磨き方や歯ブラシ等の器具の選び方を聞いて、正しい知識と習慣を持つことが大切です。

現在では、ケースによっては、特殊なコラーゲン膜を使用して、失った骨をある程度回復させることもできます。また、歯槽骨の再生医療など、臨床までもう一歩の新しい技術ももうじき実用化されるでしょう。しかし、どんな新しい治療を受けても、基本は地道なプラークコントロールとメンテナンスであることにかわりはありません。

一通りの治療が終わり、症状が安定した方も、歯周病の進行が再発しないようメンテナンスを続けなくてはなりません。遺伝的にリスクの高い方は、一ヶ月に一度ぐらい、そうでない方も症状に応じて二三ヶ月に一度、しばらくはメンテナンスを続ける必要があります。そして、すっかり安定した方や、まだ歯周病になっていない方も、半年から一年に一度ぐらいは、メンテナンスを受けることをおすすめします。何せ歯周病は知らないうちに黙って進行するものですから。

みなさん8020(ハチマルニイマル=80歳まで20本の歯を残す。)目指して歯を大切に。

平成15年4月21日(月)
愛媛新聞生活欄18面掲載