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いろ歯にほへと

愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー

平成15年3月 第3週

歯周病㊤ 歯垢で炎症 細菌付着

みなさん、歯周病という言葉ご存じですよね。以前は、歯槽膿漏と呼ばれていました。最近では、歯磨き剤のコマーシャルでよく聞かれると思います。この歯周病について、どんな病気か、どういう治療をするか、その予防法は、と3回シリーズでお伝えしていきます。

55歳のAさん、「最近どうも疲れるとあちこち歯ぐきが腫れる。なんかグラグラするし。自分じゃわからなかったけど口臭もあるらしい。」と歯科医院に行きました。

「骨が全然付いていませんね、抜歯しなくちゃダメですよ。」 「えっ!」と驚くAさん。そう、これが歯周病なのです。

それではAさんは、つい最近歯周病になったのでしょうか?実は、25歳から34歳の方で、すでに約80%が歯周病にかかっているということがわかっています。もちろん25歳の時のAさんは、こんなひどい症状はなかったはずです。歯周病は30年近くかかって、自覚症状もないままAさんの歯を失わせてしまうぐらいまで進行していたのです。

みなさんも鏡をのぞいてみましょう。歯は歯ぐきに植わっています。その境目に注目してみましょう。歯磨きの不十分な人にはプラーク(歯垢)が着いているかもしれません。この歯ぐきの中には、歯槽骨という骨が入っています。歯はその歯槽骨との間に歯根膜という薄い膜をクッションにして植わっています。歯と歯ぐきの境目に溝があります。これを歯周ポケットと呼び、健康な歯ぐきならば、1~2mmの深さです。歯周ポケットの底はその隙間に細菌が侵入しないように歯に密着しています。ところが、歯ぐきはプラークによっていとも簡単に炎症を起こしてゆるくなり、歯周ポケットが深くなっていきます。プラークがいつも付いていると、この溝の中に様々な細菌がバイオフィルムという形で住み着いてしまいます。これに唾液中のカルシウムが沈着したものが歯石です。このような状態が長く続くと、細菌が出す毒素と、免疫細胞から放出された様々な炎症性物質により組織が破壊され、骨が溶かされていきます。こうして、歯周病は進んでいきます。中にはAさんの場合と違い、30代半ばで歯を失うほど急速に進行するタイプの歯周病や、10代後半~20代前半から発症する早期発症型の歯周病もめずらしくありません。どの場合にも自覚症状無く進行するため歯を失いそうになってはじめて発見されるケースが多いのが残念です。

歯周病のなり易さは、歯周病原因菌と免疫的な遺伝性因子そして偏食・ストレスや喫煙のような環境因子により高まると考えられます。家族に歯周病や早くに歯を失った方がいる場合、要注意といえます。

一方、歯周病が存在することで、糖尿病が悪化したり、心内膜炎や心筋梗塞を起こしたり、妊婦の場合、低体重児出産の原因になることがわかっています。

もう一度鏡をのぞいてみてください。歯ぐきの周りに歯石が着いていたり、さわると出血したら、すぐに歯科医院で調べてみることをおすすめします。手遅れにならないうちに!

次回は治療についてお話します。

平成15年3月17日(月)
愛媛新聞生活欄20面掲載