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いろ歯にほへと

愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー

平成14年2月 第1週

「甘くない関係」だらだら食い虫歯の元

2月14日はバレンタインデーですね。突然ですが問題を出しますので、考えてみてください。

あるところに双子の男の子がいました。仮にタクヤくんとツヨシくんとしましょう。ふたりとも女の子に大変人気があり、バレンタインデーにはそれはそれはたくさんのチョコレートをもらいました。ふたりはむし歯になってはいけないと、食べ方を工夫しました。タクヤくんは食べる回数を減らそうと、朝・昼・晩に食後のデザートとして3個ずつ、1日に9個食べました。ツヨシくんは1回の量を減らそうと、3食とは別に、食べたいときに1回1個ずつ9回、同じく一日9個食べました。他の条件が同じだとすると、半年後、歯科医院に行くことになったのはどちらだと思いますか。

 答えはさておいて、むし歯のできる仕組みについて簡単におはなししましょう。主な登場人物?は「歯」と「ミュータンス菌」と「砂糖」です。 

歯の表面に付いたミュータンス菌は、砂糖を栄養として自分自身が増殖し、歯の表面にしっかり付きます。これが目に見えるほど増殖したものをプラークといいます。ミュータンス菌の塊であるプラークは、砂糖と触れて酸を作ります。この酸が歯を少しずつ溶かすのです。これが繰り返されて歯の色が変わってくると、初期のむし歯となります。さらに進行すると、歯に穴があいたり、痛みが出てきたりします。 

酸は食直後には実際に歯を溶かすレベルに達し、ほぼ食後1時間後に元の状態に戻ると考えられています。毎食後歯を磨きましょうというのはこのためです。ところが1日に何回も砂糖を取ると、そのたびに酸が産生されることとなります。歯は長い時間酸にさらされ、よりむし歯になる可能性が高くなるのです。だから甘いものをだらだら食べるとむし歯になりやすいのです。 

このことから、むし歯の予防は①歯を強くする(成長期にバランスのとれた食事を取る、フッ化物を応用する)②ミュータンス菌を少なくする(歯磨きなどの歯口清掃を行なう)③砂糖を減らす(食べ物や飲み物の種類や回数を工夫する)ことが大切だということがわかります。歯を磨いても磨いてもむし歯になるという方は、他の2つの対策が十分でない可能性もあります。 

ところで、タクヤくんとツヨシくんのどちらにむし歯ができやすいか、もうおわかりでしょうか。ツヨシくんですよね。でも、半年後に歯科医院に行ったのは、タクヤくんとツヨシくんでした。そう、ふたり共です。彼らは子供の頃から年2回の定期検診に通っており、半年後、歯科医院でむし歯や歯肉のチェックを受けました。結果は、同じ量のチョコレートを食べていたにもかかわらず、食べる回数を減らしたタクヤくんはむし歯をつくらずにすみましたが、一方のツヨシくんには初期の虫歯がみつかりました。むし歯の自覚症状がなかったツヨシくんですが、定期的な検診によりむし歯の早期発見ができて、痛むことなく治療は完了しました。

平成14年2月4日(月)
愛媛新聞生活欄16面掲載