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いろ歯にほへと

愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー

平成15年6月 第1週

虫歯の予防 フッ素塗布など有効

前回は、「歯」「細菌」「食べ物」そして「唾液」などの要因のバランスで、むし歯になりやすかったり、なりにくかったりするという、むし歯のリスク(危険因子)についてお話をしました。今回はこれらの要因を踏まえて、むし歯の予防のポイントをお話ししましょう。

まずは「歯」を強くする方法です。これは、歯が顎の中で作られる形成期と、歯が生えた後の時期に分けられます。永久歯は出生時から本格的な歯の形成が始まり、16歳頃までに完成するといわれており、この時期にご家庭でカルシウムを豊富に含んだバランスのよい食事をとることが大切です。また、歯が生えた後では、フッ化物を利用する方法があります。具体的には、歯科医院でのフッ素塗布、学校での集団洗口、フッ化物含有の歯磨剤の使用などです。

次に、「細菌」がいなければむし歯ができることはありません。生まれて間もない赤ちゃんの口の中は無菌ですが、しばらく経つと常在菌といって一定の細菌が住み着いてしまいます。この常在菌の中のむし歯菌の比率が少ないと、将来むし歯になりにくい事がわかってきました。最近では、お母さんなどからの唾液を介した感染を防ぐために、お母さん自身の口の中のお手入れをすることも大切なむし歯予防のひとつに加えられています。また、キシリトールや特殊な乳酸菌を摂取することで、常在菌の中のむし歯菌だけを減らすような食品も身近に手には いるようになりました。

でも、口の中にたくさんの細菌が繁殖していたのでは、効果は望めません。

そこで口の中の細菌(歯垢)を減らすことが重要です。家庭でできる、最も一般的な方法は歯ブラシを使った歯磨きですが、大切なことは、歯垢が確実に取れているかどうかです。自分では歯磨きしたつもりでも、磨き残しの部分はいつも磨かれていないことが多く、注意が必要です。

プラークコントロールの中には、専門家が行うものもあります。最近、メンテナンスのために歯科医院を訪れる方が増えています。専門家が行う歯のクリーニングは、歯石や歯の着色などを含めて、家庭で取れない部分のよごれを取ることができます。また、歯垢の棲みかを減らすためにも、むし歯をきちんと治療することは大切ですし、生えて間もない歯の場合、溝の深いところに、歯を削らないシーラント(予防填塞)なども有効です。

むし歯予防では「食べ方」を工夫することも大切です。砂糖の量、食べ物が口の中にある時間や、1日に摂る回数などが問題になります。間食は食べ物の種類や時間と量を決めておくと良いでしょう。また、スポーツドリンクや炭酸飲料など砂糖の多い清涼飲料水類を、習慣的に飲むのもひかえた方がよいでしょう。むし歯になりやすい方は、一日のすべての飲食をチェックしてみると、問題が見えてくるかもしれません。

「唾液」の量や質に問題があり、むし歯ができやすい方は、他の要因のリスクを回避することで予防するほかありませんので、よりきめ細やかな予防法が必要になります。健康な方でも、睡眠時は生理的に唾液の量は減りますので、寝る前にはなるべく飲食は控えて、確実にプラークコントロールを行うことが大切です。

次回はむし歯の治療についてお話します。

平成15年6月2日(月)
愛媛新聞生活欄18面掲載