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いろ歯にほへと

愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー

平成15年4月 第1週

歯周病㊥ 磨き方練習で細菌滅

前回、歯周病とはどんなものかご説明しました。今回は、どうやって治療していくかをお伝えします。

Bさんは35歳。偶然受けた歯科健診で歯周病を指摘され、歯科医院へやってきました。歯の周りに歯石が付き歯ぐきが腫れて赤くなっています。本人は自覚していませんでしたが、朝起きたとき口が粘ったり、時々歯ぐきから血が出たりしていたはずです。

歯周病は骨が破壊されていく病気ですから、まずレントゲンで骨の減り具合を確認します。すでに骨が1/3ぐらい減っています。場所によっては半分以上に減っている場所も数カ所あります。次に歯の周りの溝(歯周ポケット)の深さを測ります。受けた人もいますね、歯の周りにチクチクと器具を挿入して測っていきます。健康な歯ぐきなら1~2㎜の深さですが、Bさんはほとんどの歯で4~5㎜、進んだ歯では6~7㎜もありました。少しグラグラする歯もあります。中程度の比較的進行の早いタイプの歯周病です。かみ合わせのチェックをすると進んだ歯の当たりが強いことがわかりました。

さて治療に移ります。歯周病は、細菌が原因です。まず汚れを取り除かなくてはなりません。ところが口の中は毎日汚れる場所です。着いた歯石を取り除いても歯磨きが不十分ならすぐに着いてしまいます。というわけで、まずは歯科衛生士による歯磨きの練習です。「歯磨きなんて、毎日してるよ。練習なんて、子供みたい。」などと侮るなかれ。実際にプラークを染め出してみると磨けていない場所がよくわかります。時々練習を受けて歯に付着する細菌の数を減らすことが第一歩です。次に歯石を取り除いていきます。スケーラーという器具や超音波を使ったりして取り除いていきます。敏感な方は多少しみることがありますが、歯磨きができていればすぐにしみなくなります。これだけで、口の中はずいぶんとすっきりとしてきたはずです。しばらくして治り具合の検査です。歯周ポケットの深さが減ってきたのがわかります。骨の吸収の大きい場所や、歯磨きの苦手な場所ではまだ4㎜以上の深さが残っています。このような場所に対して、ルートプレーニングという歯の根の汚れを取り除きなめらかにする治療が必要です。表面麻酔をしたり、深い場合は局所麻酔をして行います。一時的に歯が浮いた感じがしますが、数日で治ります。また、歯に過剰な咬合力が加わると急激に進行するので、かみ合わせの調整や固定を行います。ここまで来るとかなり口の中は爽やかに感じるはずです。腫れの大きかった場所では少し歯ぐきが下がった気がするかもしれませんが大丈夫です。これは腫れが引いて歯ぐきが引き締まったことを示しています。以上を初期治療といい中程度までの歯周病の場合、ほぼ進行を止めることができます。

再び治り具合の検査です。Bさんの場合、どうしてもよくならない場所が一カ所ありました。骨の吸収の大きい場所です。この場所に対して歯周外科を行います。

局所麻酔のもと歯ぐきを開いて深いところに張り付いた病巣を取り除いていきます。骨をなめらかにした上で、縫い合わせます。

こうした治療で、Bさんの歯周病の進行は止まり、歯ぐきは安定した状態になりました。

でも、進行は止まったけれど治ったとは言っていません。なぜなら、減ってしまった骨が元に戻ったわけではないのです。そこで一通りの治療が終わったあとも進行が再発しないようにメンテナンスが必要になります。

次回は、予防とメンテナンスについてお話しします。

平成15年4月7日(月)
愛媛新聞生活欄16面掲載