愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー
平成14年12月 第1週
むし歯予防にフッ化物 うがいや定期的塗布
むし歯予防にフッ化物が効くというのは今や常識ではないでしょうか。
フッ化物の利用は歴史的には比較的新しいことで、そもそものきっかけは、1931年アメリカで飲料水(地下水)に含まれているフッ素にむし歯予防効果があると発見されたことだったのです。そして、1945年世界で初めて水道水フッ素濃度適正化(フロリデーションと言います)が開始されました。
フロリデーションは、「水道水に自然に含まれているフッ化物の濃度を、歯の健康にとって最適のレベル(約1ppm:日本では0.8ppm以下[水道法])に調節すること」と定義されています。フロリデーションは、WHO(世界保健機関)、FDI(世界歯科連盟)など世界の150以上もの専門機関が推奨、支持しており、現在3億6千万人以上の人々がその恩恵を受けています。ただ、残念ながらわが国で実施している自治体は今の所ありません。
その後、種々のフッ化物によるむし歯予防法が考案され、今日に至っています。
日本において、フッ化物を応用した主なむし歯予防法には、フッ化物入り歯みがき剤、歯科医院で行うフッ化物歯面塗布と、フッ化物洗口、フロリデーションなどがあります。
フッ化物入り歯みがき剤は、現在マーケットシェアで約80%を占めており、どこでも買うことが出来ます。その効果的使用法をお教えしましょう。まず、歯ブラシに何もつけないで磨いた後よくすすぎます。その後、歯ブラシにグリンピースサイズの歯みがき剤をつけて、もう一度全体に行き届くようにみがきます。ここからが大事な所です。すすぎは少量の水(大さじ1杯程度)を口に含んで約10秒間ブクブクし吐き出すのですが、2~3回までにして下さい。すすぎの回数がそれ以上多くなるとフッ化物による予防効果がなくなりますのでご注意ください。
フッ化物歯面塗布は、フッ化物を直接歯の表面に塗布する方法で、乳歯の萌え始める生後7~10ヶ月頃から4歳くらいまでは、数ヶ月に1回の割合で塗布してもらうのが理想です。
それから、永久歯は萌えてから1~2年がむし歯になりやすいので小学生、中学生の間は定期的に塗布してもらうのがよいでしょう。
また、高齢者では歯ぐきが下がって、歯の根が露出するために歯根面のむし歯になりやすいので、フッ化物歯面塗布が有効です。
フッ化物洗口はフッ化物水溶液7~10ccを1分間ぶくぶくうがいして吐き出す方法です。家庭でも簡単にできますが長続きしないのが難点です。そこで、保育園、幼稚園、小・中学校などで集団で行う方法もあります。
愛媛県下では、平成13年には6市14町2村の自治体が取り入れていて、88施設、1万3千4百人の園児、小・中学生が、園や学校で一週間に1回の頻度でフッ化物洗口を実施しており、萌え始めの永久歯のむし歯予防に優れた効果が現れています。
また、幼児から大人、高齢者まで生涯にわたってむし歯予防に効果があるのは水道水フッ素濃度適正化(フロリデーション)です。
フッ化物の有効利用と、専門家によるお口の適切な管理(メンテナンス?)によって、人類がむし歯のない社会を迎えるのは夢物語ではないかもしれません。
平成14年12月2日(月)
愛媛新聞生活欄16面掲載