羽賀さん一家の

元気ではぴか

第59回 堀井さんの悪夢
(トピックス編)

悪夢の正体

文:飯尾秀人、絵:KOUJI
呼吸助ける器具も

<これまでのあらすじ>
羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して初孫の美代(みよ)ちゃんを生んだばかりの長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。いっぽう、加奈さんの夫で雑誌社に勤める板井(いたい)さんの同僚・堀井(ほりい)さんは、歯科医師の早留(はやる)先生に睡眠不足について相談し、興味深いことを教わりました。

取材が終わって帰り支度をしていた堀井さんに、早留先生が少しニヤニヤしながら尋ねました。

「ところで堀井さん、取材の間、よくあくびをしていたなあ。昨日も飲みすぎたのかい?」

「やっぱり気づかれましたか。実は最近寝不足が続いているんですよ」

堀井さんは、今朝のことを早留先生に話しました。

「フーン。夜、眠れないから、あくびが出てしまうんだね。でも、いびきはその病気の予備群だといえるから、注意が必要かもしれないね。昼間も眠たくなるなら注意しなければならないね」

日中に強い眠気を催す状態を傾眠と呼び、注意力・記憶力などの低下だけでなく、居眠り運転による交通事故や重大事故にもつながる場合もあるのです。

「どうすればいいんでしょう?」

「寝ている間の状態を調べるには、専門の病院で診てもらう必要があるだろうね。でもその前にスクリーニングしてからでもいいんじゃないかな」

スクリーニングとは、簡単な検査や問診でその病気の有無や重症度を判別するものです。検査は呼吸の連続モニターと動脈血酸素飽和度(どうみゃくけつさんそほうわど)を測定する方法が行われ、疑いのある場合、確定診断に移行するのです。この病気の確定診断にはポリソムノグラフィー(PSG)と呼ばれる検査入院が必要とされます。体中に呼吸、脳波、筋電図、眼球の動きなどを測定する装置をつなぎ、眠っている時の状態を調べるのです。早留先生は、その様子が写った写真を堀井さんに見せて言いました。

「鉄腕アトムの誕生のシーンのようだろ。はじめて見た時にはワクワクしたよ。それに、この診断をしてもらったら、僕たち歯科医もスリープスプリントの治療が保険でできるんだ」

世代が違うので少し苦笑いをしていた堀井さんでしたが、早留先生の言葉にすばやく反応しました。

「スリープスプリント? どんなものか教えてくださいよ」

「じゃあ、今日は時間がないから、今度来た時にその資料を揃えておいてあげるよ」

その場を後にした堀井さんは後日、早留先生から資料をもらって、スリープスプリントについて詳しく知ることができました。

スリープスプリントとは、スポーツ選手が使用するマウスガードやマウスピースと似たもので、寝るときに口の中に装着します。それを装着すると、下顎を前に引き出して舌を持ち上げるので、気道が広がって呼吸しやすくなるのです。他の方法に比べて比較的安価で、体にも負担がかからないのですが、残念ながらあらゆる人に適応可能なわけではありません。スリープスプリントを入れると寝つけない人や鼻の悪い人、また残存歯が少ない場合や歯周病のひどい人にも使用できないのです。堀井さんの場合、試しに使ってみると、それまでの睡眠不足が解消できたようです。

休日の昼下がり、堀井さんは夢を見ていました。それは胸を締め付けられるような悪夢でした。苦しそうにしている堀井さんの方を見ながら、明子さんは叫びました。

「よっくん。パパが遊んでくれないからといって、いつも馬乗りばかりしちゃあだめよ。パパ、汗びっしょりじゃない」


<はぴか情報>
フッソぬりおえてルンルン 秋の空(小3、二宮晴香さん)

愛媛県歯科医師会(089・933・4371)「はぴかちゃん歯いく大賞」(小学生以下、中高生、一般)第1回入賞作(学年は昨年)をご紹介します。9月末まで第2回募集中。要項は左欄の同会ホームページにあります。