羽賀さん一家の

元気ではぴか

第51回 新米パパの夢
(乳歯編)

鉄は熱いうちに打て

文:飯尾秀人、絵:KOUJI
早期の予防処置が効果大

<これまでのあらすじ>
羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して初孫の美代(みよ)ちゃんを生んだばかりの長女加奈(かな)さん、、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男昭夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。加奈さんの夫で雑誌社に勤める板井洋(いたいひろし)さんは、同期の堀井さんと話していて、幼児期に歯の手入れを始めることの大切さを知ります。

堀井さんが東奔西走(とうほんせいそう)して調べたところによると、乳歯のムシ歯が多い子供は、永久歯のムシ歯も多くなるのは事実のようです。

「この統計資料を見てごらんよ」

彼が差し出したのは乳歯と永久歯のムシ歯の関係について調査した統計資料でした。そこには乳歯のムシ歯が多いと、永久歯のムシ歯が約2倍のスピードで増え続けるというデータが載っていたのです。

「やはり子供の歯のムシ歯が多いと、大人の歯でも多くなるのかな。昔から明眸皓歯(めいぼうこうし)といって、澄んだ瞳と白い歯は美人の条件とされているから、美代も今から気をつけないといけないな」

「美代ちゃんは生まれてまだ1つにもならないのに、そんな親バカでは先が思いやられるなあ。しかし口の中に子供の歯のムシ歯が多いとムシ歯菌も増えている訳だから、その中に生えてきた大人の歯は次の標的にされて、ムシ歯になりやすくなるというのは明白な論理だな」

「汚れたタオルで手を拭いても、手の汚れは取れないのといっしょかな。ところで実際の証拠でもあるのかい」

堀井さんは懇意にしている歯医者さんからもらった、何枚かの写真を取り出しました。そして、そこには大きな乳歯のムシ歯のすぐ後ろから、6才臼歯と呼ばれる大人の歯が透明感のない白く濁った色をして、生えてきている様子が写し出されていたのです。

「無断で写真なんか入手したら、『個人情報保護法』に抵触しないかい?」

「その点は心配御無用。実はこの写真、恥ずかしながら俺の息子のなんだ」

堀井さんは、学生時代に今の奥さんと結婚して、上の男の子は7歳になります。生活基盤の安定しない中での新婚生活のスタートでしたから、最初に生まれたお子さんの世話を十分できなかったようです。そのためか、3歳になる下の男の子には同じ失敗は繰り返さまいという、並々ならぬ意気込みがありました。

「しかし、これから大人の歯がムシ歯だらけになるとしたら、かわいそうだな。何か手立てがあったらいいのに」

「その点も心配御無用。その歯医者さんで、ムシ歯が進行しないようメンテナンスに通っているんだ」

「へぇー、どんなことをするんだい」

「まず3カ月ごとにムシ歯が進行していないか歯医者さんでチェックしてもらって、その後、ハミガキ指導とフッ素を塗ってもらうんだ。何でも息子のムシ歯は『初期う蝕』といって、まだ歯に穴が開いているわけではないから、しっかり管理していけば削って治さなくてもいいらしいよ」

歯に取り込まれたフッ素は、初期のムシ歯となった部分(脱灰(だっかい))にリンやカルシウムなどのミネラルを取り込んで再石灰化を促進します。またそれ以外にもムシ歯菌の活動を抑制する作用や、歯の表面にあるエナメル質の結晶性を高めて酸に対する抵抗力を強くする効果もあるのです。

「じゃあ、うちも美代だけじゃなく家族みんなで、フッ素を塗ってもらいに行ってみようかな」

「美代ちゃんは乳歯だからフッ素の効果は期待できるけど、柔軟性が無くなった板井の歯は脳みそといっしょで、今さら鍛えられるかなー?」


<はぴか情報>
歯がきらきら 波がきらきら 夏の海(小4 山田雅智君)
白い歯が キラリと光る 新学期(中3 越智美樹子さん)

愛媛県歯科医師会(089・933・4371)「はぴかちゃん歯いく大賞」(小学以下、中高生、一般)第1回入賞作(学年は昨年)をご紹介します。9月末まで第2回募集中。要項は左記の同会ホームページに。