羽賀さん一家の

元気ではぴか

第52回 新米パパの夢
(乳歯編)

ハミガキに始まりハミガキに終わる

文:飯尾秀人、絵:KOUJI
成人も有効、フッ素の利用 使い方誤ると害にも

<これまでのあらすじ>
羽賀さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して初孫の美代(みよ)ちゃんを生んだばかりの長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男昭夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。加奈さんの夫で雑誌社に勤める板井洋(いたいひろし)さんは、同期の堀井(ほりい)さんと熱心に話し合っています。虫歯を予防するフッ素についてのようです。

堀井さんが知人の歯科医から教えてもらったところでは、歯は『萌出後成熟』といって、口の中に生えた直後には歯質が十分出来上がっていないそうです。つまり、生えてから2~3年の間に唾液飲食物から必要な無機質を取り込むことにより、結晶性や石灰化が向上して、歯は出来上がるということなのです。したがって、この時期にフッ素を使用することが、ムシ歯予防には最も効果があるといえるでしょう。

「フッ素のムシ歯予防の効果は、大人では期待できないのかな」

フッ素の効果を知った洋さんは、塗るだけでムシ歯予防ができるのではないかと期待していました。というのも、最近は奥さんの加奈さんが歯のメンテナンスに目覚めたのか、「あなた、寝る前のハミガキ忘れているわよ。していらっしゃい」と、何かと小言を言われるのに、少し辟易していたからです。

「俺の知っている先生は、歯茎がやせて根っこが出ている人にも効果があると言っていたけど、健康な俺たちには、あまり期待しないほうが無難かもしれないな」

高齢者や歯周病の人にみられる『根面う蝕』は、硬いエナメル質に覆われていない歯根が露出しているために、根元からムシ歯になってしまいます。そこにフッ素を塗布することにより、ムシ歯に対する抵抗性を高めようというのです。

「やっぱりハミガキしないとだめなのかな。それにフッ素を塗るだけに歯医者に行くのも、何か億劫な気もするし…」

洋さんは堀井さんの残り少なくなった頭頂部の髪の毛を、しげしげと眺めてしまいました。

実は堀井さんは数年前から抜け毛に悩んでいて、以前は『この発毛剤は画期的な新製品で、効き目が抜群なんだ』と、何種類もの塗り薬を試していたのです。しかし現在の彼の頭を見ると、彼が塗り薬にあまり期待しなくなったのも納得せざるをえないでしょう。

「いや、他にも方法はあるよ。歯磨(はみが)き粉にもフッ素が入っているのがあるからね」

「そうか、それならわざわざ歯医者に行かなくてもいいか」

フッ素を歯に取り入れるには、(1)歯科医院や保健所で年に数回歯に直接塗布してもらう(2)フッ素の含まれる洗口剤を処方してもらい毎日家庭でうがいをする(3)フッ素含有歯磨剤を毎食後の歯ブラシ時に使う、という3つの方法が主に利用されています。

「でもそれなら堀井の息子さんは、何でフッ素を塗りにわざわざ歯医者に通っているの?」

「ムシ歯予防の基本はハミガキしかないらしくて、正しいハミガキができているかチェックしてもらっているんだ。つまりそれ以外のものは、ハミガキを御座なりにするとほとんど効果はないということさ。それにフッ素は万能薬ではないし、その使い方を誤ると毒にもなると言われたよ」

フッ素は自然界に広く存在する安全な物質ですから適量ではむし歯予防に役立ちますが、誤った方法で使用すると害が生じる場合もあるのです。


<はぴか情報>
子等孫の 歯ブラシ残し 夏去りぬ (一般 田村治子さん)
ずるみがき 歯ぶらしだけが 知っている(小4玉井花菜美さん)

愛媛県歯科医師会(089・933・4371)「はぴかちゃん歯いく大賞」(小学以下、中高生、一般)第1回入賞作(学年は昨年)をご紹介します。9月末まで第2回募集中。要項は左欄の同会ホームページにあり。