羽賀さん一家の

元気ではぴか

第50回 新米パパの夢
(乳歯編)

歯から歯へのバトンタッチ

文:飯尾秀人、絵:KOUJI
乳歯のムシ歯放置は危険

<これまでのあらすじ>
羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して初孫の美代(みよ)ちゃんを生んだばかりの長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男昭夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。加奈さんの夫で雑誌社に勤める板井洋(いたいひろし)さんは、昼休みに同期の堀井さんと、何か話し合っているようです。

「締め切り間近だから、この原稿は明日までに仕上げてくれよ」

そう編集長に檄(げき)を飛ばされた板井洋さんは、自分のデスクに戻ると深いため息をついてしまいました。それは今、彼が担当している「会社の吸収合併と株取引に関する裏取引」という特集記事の最後の部分を、うまくまとめることができなかったからです。

「今日中に終わらせないと…」

洋さんはそうつぶやきながら、身を奮い立たせてパソコンに向かいました。そうして四苦八苦している間に時間は過ぎて12時を回ったので、昼食を食べに社外に出かけて行くことになりました。会社の周)りには彼のいきつけの食堂が何軒かあったのですが、迷ったあげく今日は500円の日替わりランチのある定食屋に、足を踏み入れることにしました。

「堀井、お前も来てたのか。前の席、空いているかい?」

洋さんはそのお店で、同じ雑誌社で生活面を担当している堀井さんと偶然出会ったのです。そして彼の前の席に座ってランチを注文した後、悩んでいる記事についてのアドバイスを求めたのです。実は彼とは同期入社で、悩み事があるとよく相談し合う仲だったのでした。

「そうか、それは大変だな。誰もが注目していたことだから話題性もあるしな。しかしあの社長もITの革命児として孤軍奮闘したけど、出る杭は打たれるというか風当たりは強かったね。しかしもう一方も勝てば官軍といわんばかりに、あの手この手で応戦(して泥仕合の様相を呈していたしね。本当にこのまま波は収まるのかな?」

「ところで堀井はどんな記事を担当しているんだい?」

「俺は今、『育児が危ない』という連載記事を書いているんだ。なんてったって最近、育児放棄とか幼児虐待も増えているだろ。だから実際の事例をさまざまな角度から検証して、どこに問題点があるのか探っているんだ。そういえば板井も以前『パパの育児日記』という記事を連載していたよな。あれは好評だったよ」

「うん、あれは自分の足で取材した真実のドラマだったから、読者の反響も大きかったしね。それにいざ自分が父親になってみると、その時の体験が意外に役に立っているんだ」

「それだったら、俺んちでも今回のテーマは、役に立つかもしれないな」

「どんな記事を書いているんだい?」

堀井さんは持っていたバッグの中から一枚のファイルを取り出し、洋さんに手渡しました。そして、そこには『(3)乳歯をムシ歯にすると永久歯が危ない』というタイトルが書かれていたのです。それは愛娘の美代ちゃんの乳歯が生えてきた洋さんにとっても、少し気になる内容でした。

「やっぱり、子供の歯のムシ歯が多いと、大人の歯でも多くなるのかな。僕の子供の頃は“子供の歯はムシ歯になっても大人の歯に生え替わるから”という言葉をよく聞いたもんだけどね」

「だろ! だからこれが事実かどうか検証しようというんだよ」

その後、洋さんと堀井さんは昼休みの終わるまで熱弁をふるったのでした。

次回は7月6日(水)に掲載します。


<はぴか情報>
新しい はぶらしおろす キャンプの夜(大賞 八幡浜市立松蔭小4年 松本みなみさん)

愛媛県歯科医師会(089・933・4371)「はぴかちゃん歯いく」大賞(小学以下、中高生、一般)第1回入賞作(学年は昨年)をご紹介します。9月末まで第2回募集中。要項は左欄の同会ホームページにあります。