羽賀さん一家の

元気ではぴか

第46回 初めての赤ちゃん
(歯の芽生え編)

赤ちゃんは欲しがっている

文:飯尾秀人、絵:KOUJI
母乳与え、歯や口腔の発育を

<これまでのあらすじ>
羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して帰省中の長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生(しょうがくせい)の長男昭夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。加奈さんは長女美代(みよ)ちゃんを前に、浮江さんと話し込んでいます。母乳で育てる大切さや離乳が話題のようです。

浮江さんと加奈さんは、台所の椅子に腰を掛けて『離乳』の話を続けています。そしてその横には赤ちゃん椅子に座った美代ちゃんが、2人の顔を交互に眺めながら笑顔を振りまいていました。

「日真名歯科医院での母親教室では、いろいろと出産後のことも教わっているから助かっているのよ」

「ふーん、どんなことを教わっているの?」

「妊娠中もそうだけど、健康な歯と口のケアは、歯が生えていない赤ちゃんの時期が大切だということかしら」

「ふーん、それはどうしてなの?」

「母乳には乳児の体を守るための免疫物質が含まれているし、スキンシップにも欠かせないけどそれだけでなく、母乳で育てることは歯や口の中の正常な発育にとっても重要なのよ」

食べるという行為は、摂食・嚥下(せっしょく・えんげ)運動といういくつもの動作が協調することにより行われています。赤ちゃんは母乳を飲む事により、舌で乳房を包み込んで固定し、一生懸命吸引することにより、これらの動作を学習しているのです。

またそのお陰でお口のまわりの筋肉やあごは正常に発達し、鼻呼吸を覚えて口呼吸になる弊害から防いでくれるのです。このように母乳を吸うということは、赤ちゃんにとっては、大切な仕事の一つなのです。

「それに歯が生えてきた時、ハミガキ上手になってくれるかもしれないの」

上唇の裏には上唇小帯(じょうしんしょうたい)と呼ばれるヒダがあります。乳児はこのヒダが歯の近くまであり、歯ブラシが当たるととても痛いと感じるそうです。しかし母乳を飲むという動作はこの上唇小帯を自然に上方に収縮させるのです。

「ふーん、母乳で育てることは大事なのね。でも母乳が出なかったら赤ちゃんにミルクを与えないと、お腹ペコペコになっちゃうわよ」

「その時はほ乳ビンの乳首の部分に気をつけるの。乳首にもいろいろな種類があって、口で吸っただけでストローのようにおっぱいが飲めるタイプのものでなく、『ヌークの乳首』のようにかまないと出てこない乳首を選ぶようにするの」

人工ミルクを飲ませる場合、乳首はあまりミルクが出過ぎない物を使用しましょう。『ヌークの乳首』とはお母さんの乳首をお手本に生まれたもので、アゴと舌を使って噛まないと出てこないタイプの乳首です。

ただし噛む力が弱く、ヌークでは飲むことができない小さな赤ちゃんの場合は、最初は小さな穴の普通の乳首を使います。

「ふーん、最近はIT社会になって情報も多くなったから、どの情報を信頼したらいいか新米ママも考えないといけないのね」

「そうなの。以前流行ったうつぶせ寝も、最近は乳幼児突然死症候群(SIDS)との関連がわかってきて注意が必要だしね」

浮江さんと加奈さんの出した結論は、離乳は他の赤ちゃんと比較したり月齢にこだわったりせず、時期を急がないということでした。また最近では、早い離乳は果汁や牛乳などの異種蛋白によるアトピーなどの、アレルギー症状を引き起こしやすいという報告もあるのです。


<はぴか情報>
よくかむ食習慣は、母乳で育てることから始まります。あごの上下の運動は口の周りの筋肉を発達させ、乳歯の歯並びをきれいにします。また正しいほ乳は舌の大切なトレーニングになり、その後のそしゃくの発達に大きく関係しています。(資料提供、8020推進財団)