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いろ歯にほへと

愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー

平成15年2月 第3週

破折・脱臼 歯根膜の良否が左右

歯のけが(外傷)は、転倒や打撲・スポーツ事故などによって起こりますが、年齢的には乳幼児や学童期の小児に多く見られるようです。

状況は様々ですが、代表的なものを挙げますと

  1. 歯の破折(歯が折れた状態)
  2. 歯の脱臼(歯がぐらぐらしたり抜けた状態)
  3. 歯の埋入(歯が骨の中にめり込んだ状態)
  4. 喪失(脱落して失った状態)

などです。

さてここでは、歯の破折と脱臼に関する治療方法や注意事項について説明します。

歯の破折には、歯ぐきから上の部分が割れる歯冠破折と根の部分が折れる歯根破折があります。歯冠破折の中には歯の一部が欠けたものから、歯の神経が露出して大きく破折したものまで様々であり、治療方法もその状態に応じて異なります。受傷した際に折れた破片があれば、なるべく歯科へ持って行ってください。場合によっては、破片を元の歯に接着して修復することもできます。しかし破折の位置が悪かったり、複雑な場合には元の歯の神経を治療したのち、人工材料で修復することになることもあります。歯根破折では、両隣の無事な歯と仮の連結・固定を1~3ヶ月して自然に安定するのを待ちます。状態によっては抜歯になるようなケースもあります。

歯の脱臼は、骨の中でグラグラしている状態の不完全脱臼(亜脱臼ともいう)と歯が骨から完全に離れた状態の完全脱臼に分かれます。不完全脱臼の場合、動揺が軽度ならば歯科医の診断により、そのまま安静にしておくケースもありますが、動揺が激しかったり歯が転位(倒れたり位置がずれた状態)している場合には、歯を元の正しい位置に戻し約1~3ヶ月両隣の無事な歯と連結・固定して安静にしておきます。

完全脱臼して歯が口の外に脱落した場合は、歯を持って歯科を受診する前に次の事を守ってください。なぜならば、歯根の表面には歯根膜というとても大事な組織があり、この状態の良否が結果を左右するからです。

  • 根の部分に触れないで、軽く汚れを洗い流してください。(水道水で約30秒以内)
  • 次に口中で保存するか、子供で飲み込む恐れのある場合は生理食塩水もしくは牛乳に浸してできるだけ早く来院してください。
  • 水道水に長く浸したり、薬液で消毒などは決してしないでください。歯根膜が死んでしまいます。
  • 乾燥に弱いので十分に注意してください。

外傷歯では、受傷程度の軽重に関係なく、あとから歯が変色したり、歯根の先に病気を作ったり、歯根が溶けたりといった予測できないトラブルが発生する場合も少なくありません。また、無症状でも神経や歯根の治療を必要とする場合もありますので、かかりつけ歯科医と共に経過観察することも忘れないでください。

平成15年2月17日(月)
愛媛新聞生活欄16面掲載