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いろ歯にほへと

愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー

平成14年1月 第3週

「歯医者さんのお仕事」多種多様身元確認も

皆さんも1度や2度は歯科医院へ通った経験があると思いますが、歯医者さんといえば虫歯や歯周病の治療や歯を被せ物や詰め物で修復したり無くなった歯を義歯やブリッジで補綴したりなどの治療を思い浮かばれると思います。

こういったことも、もちろん私たち歯科医師の仕事ですが、今回は様々な歯科医師の仕事を紹介いたします。 

歯学部を卒業後、国家試験に合格し、資格としては歯科医師になります。けれど、歯科医師の免許を取得することと臨床家になることは別です。歯科医の中には、臨床家としての治療を行わず、解剖、細菌、病理、法医学などの基礎医学を行う研究医も一般の歯科学歯学います。また、大学の先生になる人は、大学院に進み、学位をとって外科、矯正など、歯学博士となって口腔外科、矯正歯科より細分化した専門を究めていきます。さらに、補綴 (入歯、ブリッジなど)の専門の人は治療に関わる器具の研究・開発に携わる道に進んだり、薬品会社の研究職に就く人もいます。その他、保健所などの行政に携わるなど、さまざまな進路があります。 

臨床家の中でも歯学部付属病院や病院の口腔外科の歯科医師は口腔内の腫瘍、臨床医 ではガンや外傷、骨折などの外科治療を主に行っています。 

開業医や歯科医院勤務の歯科医師ケガ開業歯科医師は診療所での日々の診療はもちろん地域や学校の歯科保健に携わったり、いつまで歯科保健活動も自分の歯で食べる楽しみを享受し、安心して老後の生活を送ることを目指して、訪問歯科診療などに従事しています。また同じ臨床医のなかでも歯列矯正や小児歯科,往診を専門にした歯科医師もいます。最近では齲蝕や歯周病の予防や歯のホワイトニング、むし歯やインプラント、など審美性へのニーズが高まり、私たち臨床家の仕事も幅広く、多種多様になってきました。

昨年は悲惨な事故や事件がありました。えひめ丸の事故やニューヨークの世界貿易センタービルでの犠牲になられた多くの方々が歯の特徴や治療痕によって身元が判明しました。死者520人、生存者わずかに4人という1985年の日本航空墜落事故では、群馬県の警察歯科医の奮闘に加え、資料を提供した全国の歯科医の協力により身元確認率は実に99.6%(犠牲者数520人中、518人まで確認)となりました。この事故を契機に全国に警察歯科医会が発足し、愛媛県でも愛媛県警察歯科医会が発各県に足し活動しています。特に歯は人間の体の中で最も固く丈夫であることと、形や歯並びなどの個人差が大きく明確であるために、他の条件が悪くなる程、その重要性が高くなります。これに加えて、現代人において齲蝕や歯周病は最も罹患率の高い病気でむし歯罹患率が高くあると同時に歯科医療も普及をみているため、個人に特徴的な治療痕とその治療を担しているため、当した歯科医のところに多くの情報が残されているという有利な条件を生かすことができます。手がかりの乏しい御遺体でも、治療記録やX線写真などとつきあわせて調べることで個人を特定することができます。 

もちろん出動がないことが一番なのですが、いざという時の備えはできているのです。

平成14年1月21日(月)
愛媛新聞生活欄20面掲載