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いろ歯にほへと

愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー

平成14年8月 第1週

スポーツ飲料 砂糖多くむし歯の温床

みなさん、清涼飲料水を飲みすぎてはいませんか?

夏の暑い日、日陰にいても汗がダラダラ、のどはカラカラ、そんな時飲む冷たい飲み物はひと時の安らぎを与えてくれます。今はどこに行っても自動販売機が置かれていて、子供も大人も、いつでもどこでも、簡単にいろいろな飲み物を手に入れることができます。その種類も豊富で、炭酸飲料、缶コーヒー、ジュース、スポーツ飲料や、ウーロン茶、天然水など、その売れ筋もさまざまな様です。なかでもスポーツドリンクは健康的なイメージで手軽に飲めるお水代わりとして、生活の中に定着しています。

でも、私たち歯科医の立場から見ますと、不安と危険がいっぱいで、むし歯や全身の健康との関連を考えないわけにはいきません。

一つ目は、意外に多く含まれている砂糖の心配です。砂糖が口の中に入るとむし歯菌は酸を作り出し歯を溶かします。砂糖の量と回数が、むし歯の発生と関連が深いのは、よく知られています。最近はこれらの甘味飲料も、砂糖以外の代用甘味料(オリゴ糖やアスパルテームなど)を使いむし歯になりにくい工夫がされていますが、まだまだ砂糖を含むものが多いのが現状です。

二つ目は酸性度の高さです。これらの飲み物の中には、一時的にですが、歯の表面からカルシウムが溶け出すのに十分な、酸性の度合いの高いものもあります。

三つ目はカロリーの多い場合です。デンプンなど食べ物から摂る糖分と違い、液体糖の場合体内への吸収が早いため、血糖値の上下動が激しく、飲み続けた場合、一過性の糖尿病になることがあります。いわゆるペットボトル症候群と言われる慢性の糖尿病にすすんでいきます。

だからといって、スポーツドリンクを飲んじゃいけないということではありません。疲れた体や神経に、時には甘味も必要ですし、飲む輸液として発熱時や運動後には効率良く水分を補うスポーツドリンクは効果的です。しかし、その飲み物の成分を見て、その時に適した飲み物を選び、飲みかたを考えてほしいのです。一度、普段飲む飲料の成分表示を比べてみると良いでしょう。飲み放題は良くないのではないでしょうか。

毎年学校歯科健診をしておりますと、近年子どものむし歯は少なくなってきています。と同時に傾向として、むし歯がほとんど無い子とむし歯の多い子に分かれるようです。これは、歯の質やブラッシングの回数なども一因ですが、家庭での食生活を中心とした歯科保健への取り組みの差が大きいように思われます。お菓子やジュース類をだらだらと摂っていると確実にむし歯は多くなります。

むし歯は、ミュータンス菌などの細菌が原因である感染症であると同時に、食生活の乱れによって起こる生活習慣病でもあります。その予防の基本は、水分補給時を含め、規則正しい食生活を送り、飲み物食べ物などで口の中が汚れる回数・時間を短くする習慣を維持することにかかっています。スポーツドリンクでむし歯をつくることなく、夏を乗り切ってほしいと願っています。

平成14年8月5日(月)
愛媛新聞生活面掲載