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いろ歯にほへと

愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー

平成14年7月 第3週

夢の金属? チタン 軽く強く生命体に優しい

チタンとは18世紀末に発見された金属元素です。英語ではTitanium,ギリシャ神話に出てくる巨人、タイタンにちなんで命名されたそうです。このチタンは、地球に優しい、体に優しい金属としてわずか50年程の歴史ですが、ここ10年で飛躍的に発展しています。

チタンは、「軽い」「錆びない」「強い」という特性があります。大きいものは航空機からメガネ、時計、ゴルフクラブなど多岐にわたり使われています。プロ野球福岡ドームの可動屋根には、0.3ミリ厚のチタン板がおよそ100トン使われているそうです。また直接肌に触れるメガネ・時計は、アレルギーの心配のない、体に優しい金属としてチタンの評価が高まっています。さらに「錆びない」ので東京湾横断橋の橋脚に利用されたそうで、海水にも強いチタンは修理やメイテナンスが難しい海洋開発へも期待されています。

金属アレルギーの話題を耳にしたことがあると思いますが、ピアスやネックレス、時計などの皮膚に接触する金属用品、または口の中の歯科用金属からのイオンの溶出によるより、アレルギーがおこります。防止策としてはイオンが溶出しない、耐食性のよい金属を身につければよいのです。一方、海から誕生した我々生物の体の中の環境は海に似ているので、海水に強いチタンは生体にも強いわけです。そこで、軽くて強く生体にも優しい夢のような金属として医療分野での使用も広がってきました。

歯科領域では1960年代にインプラント(人工歯根)として使われ始め、顎の骨に対する親和性に優れていることが実証されました。耐食性が良い金や白金あるいは金合金がインプラント材料として成功しなかったのに、チタンはなぜ成功したのでしょうか?チタンを生体の擬似体液につけておくと、表面に人の骨になじみのよい薄い膜が生成する性質がみとめられ、これが骨に対する親和性と密接に関係しているのです。顎の骨に埋められた人工歯根は咀嚼する力に耐えなければなりません。我々の物を噛む力は、大体自分の体重ぐらいの力があります。チタンのインプラントはこの力に耐え、顎の骨と一体となり十分機能するようになります。取り外しの入れ歯もチタンを使って、非常にうすく軽い物ができるようになりました。この入れ歯は装着感が良く味覚も妨げず、食べ物がこびりつきにくく、また汚れが付いても容易に落とすことが可能です。

チタンは加工するのが難しく精度が低くなるなど欠点がありましたが、チタンは夢の金属である事に間違いはありません。

様々な欠点をカバ-する研究がされており、いろんな改良が行われ他の金属に負けない精密な加工が可能になりました。もっと夢の金属に近づくことでしょう。ある研究者が「チタンはじゃじゃ馬で調教するのが難しいがこれを名馬に育てていくのが大切ではないか」と語られたそうです。

じゃじゃ馬チタンも、もう少しで、完全な名馬になるでしょう。