羽賀さん一家の

元気ではぴか

第19回 明夫くんとテレビゲーム
(不正咬合編)

歯は乾燥に弱い?

文:飯尾秀人、絵:KOUJI
歯根膜はショック吸収装置

<これまでのあらすじ>
羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して妊娠中の長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。体育の授業中、勢い余って上の前歯をぶつけた明夫くん。症状を診てもらうため、浮江さんは明夫くんと歯科医院を訪れました。

「レントゲンを見る限り特に問題はないようですね。これだったら2~3日無理をかけないよう注意していたら、自然に痛みも引いてくるでしょう」

撮影した明夫くんの前歯のレントゲンを見ながら先生はそう説明してくれました。

「ああ、よかったわね」

浮江さんはそう明夫くんに話しかけました。明夫くんも少しホッとした表情をみせました。

「でも強くぶつかっていたら、たいへんだったよ。もっと歯がグラグラしていたら、接着剤を使って隣の歯とくっつけて様子をみないといけなかったからね。この前やってきた高校生は、歯が少し飛び出してグラグラしていたから麻酔をして元の位置に戻してから、接着剤を使って隣の歯とくっつける処置をしなければならなかったんだよ」

「えっ! 歯が飛び出すの」

明夫くんはびっくりしたように叫びました。その様子を見た先生は、歯の模型を使って明夫くんに説明してくれたのです。

「この模型を見てごらん。歯は電球がソケットの中に入っているように骨の中にスッポリ入っているんだよ。しかし強い衝撃を受けると、こんなふうにはずれてしまうんだよ」

そう言って先生は模型から歯を少し飛び出させました。

「ちょうど電球の溝に当たるところが歯根膜といって歯と骨をくっつける役割をしているんだ。だからもし歯が口(の中から抜け落ちても素早くきちんと処置をすれば元に戻すこともできるんだよ」

「じゃあ、ほんとに歯が飛び出したら、どうしたらいいんですか?」

「まず口の中に残っていたらそのままで歯科医院にやってきて処置をしてもらうことだね。もし口から歯が飛び出して落ちてしまってもあわてないで、探してごらん。きっと近くにあるはずだから。コンタクトレンズだってはずれたら、そうやって探すだろう。見つかったら、一番大事なことは抜けた歯を絶対に乾燥させないように気をつけることだね」

「えっ、どうしてなのですか?」

「歯根膜は歯の根っこの周りにあるんだけど、軟らかな組織でできているから乾燥するとダメになってしまって、骨とくっついてくれなくなるんだ。だから抜けた歯が泥などで汚れていたらまず軽く水で洗い流(なが)すといいよ。だけど、その時に絶対にゴシゴシ強くこすって歯根膜を傷つけたりはしてはいけないんだ」

「フーン、そうなの。でも水がなかったらどうしたらいいんですか」

「学校や家だったら生理食塩水や牛乳に浸して持ってくることもできるけど、ない時はそのまま口の中に入れておくのがいいかな。でも飲み込まないよう舌の下にでも入れておいた方がいいよ。それと歯の一部が欠けて飛び出しても、それを探すようにしてね。接着剤でつく場合もあるからね」

「えっ、歯が折れても大丈夫なの」

「折れ方によっては、神経を抜かないといけない場合もあるけど、そのままくっつけられることもあるんだよ。もしかけらがなかったら合成樹脂を詰めるけどやっぱり歯のほうがきれいに元に戻せるからね」

「うん。今度誰かとぶつかったらそうするように、気をつけるね」

明夫くんがそう言うと、先生は笑いながら

「でもまずぶつからないように気をつけることが大事じゃないかな」

と笑いながら答えました。

愛媛県歯科医師会監修
毎週木曜掲載


<はぴか情報>
歯は歯根と呼ばれる部分が歯槽骨という骨のなかに収まって、歯根膜によって結合されています。激しい外力が瞬時に働くと歯根膜が断裂したような状態になり、重症の場合には歯がスッポリと抜け落ちてしまいます。歯を強く打った場合は、歯科医院で歯の状態を確認しておくことが大切です。(資料提供・愛媛県歯科医師会)